サーフボードを選ぶにあたって、長さ、幅、厚さなどのスペックとともにチェックしておきたいのが浮力です。通常、ボードの浮力を示す値として使われるのが、リットル(L)の単位で表示される容量です。
厳密にはボードの物理的な体積を表す数値なのですが、浮力は容積に比例するので、浮力を表すわかりやすい指標として考えても問題はないと思います。
通常、サーファーの体重に応じた適正な浮力を持つボードを選ぶのがよいと言われることが多いのですが、初心者は適正浮力にあまり囚われず、大きめな浮力のボードを使用するほうがよいと言われることもあります。
一見矛盾する二つの考え方ですが、どう考えたらいいでしょう?
ちなみに、サーフボードの適正浮力とは、一般的に短めのサーフボードに用いられる考え方だと思います。  

1. 一般的な体重と適正浮力の考え方

一般的には、サーファーの体重やスキルの状態に応じて、適正な浮力を持つボードを選ぶのがよいとされています。何を持って適正というのか、ここの解釈が問題だと思われます。

まず浮力がサーフィンにどう変化と影響を与えるのかを考えてみたいと思います。

サーフィンは水中で行うスポーツです。波をつかまえて、テイクオフして、より早くボードの底面に流れる水流によって生じる揚力を得ることによってボードスピードを得て水面を滑走すると同時に、体重移動によってレールやフィンなどを水面に食い込ませて、思いとおりのラインを描き、ターンなどを組み合わせてボードを水面を走らせながら様々な技を繰り広げます。

つまり、それらのアクションを行うのに必要かつ十分な浮力がないとボードは沈んでしまうし、ボードの走りが遅くなり、十分なスピードが得られないことになります。

ちなみに揚力の説明はこちらのブログの2章「テイクオフの仕組みを知る」をご確認ください。

逆に、過剰な浮力は、体重移動などをしても思ったように技を繰り出すことができないと感じますし、容積に比例するのが浮力ですから、技を使おうとする度にボードの重さが気になるようになり、ボードのレスポンスの悪さとして感じるようになります。

適正な浮力とは、スピードと安定性、体重移動によるボードコントロールがしづらいか、しやすいか、これらの中間にあって、サーファーが希望する状態を満足させる浮力を考えるのが良いだろうと思います。 

つい“適正”という言葉に惑わされがちですが、ボードの適正な浮力がどれくらいなのかは、ひとりひとりのサーファーによって異なると考えるのが自然です。

波乗りの技術やスタイルなどによって、さらに好き嫌いという要素も含めて、『適正浮力表』の上で、その人にとって“適正”とされる浮力のボードを使っていても、乗りやすいと感じる人がいれば、そうでない人もいるのは当然といえば当然なことです。

適正リッター数は簡単な数式で求める事が出来ます。体重×レベル数値=目安となるリッター数。サイトやメーカーによって多少の考え方、求め方の違いはありますが、大体同じくらいのリッター数が求められると思います。以下に各レベルに合わせた数式を記載しておきます。

・ビギナーサーファーの場合 (体重)×(0.6)=目安となるリッター数

・中級サーファーの場合 (体重)×(0.45)=目安となるリッター数

・上級者サーファーの場合 (体重)×(0.4)=目安となるリッター数

通常、自分のボードが持つべき浮力を知るにあたって、体重に対して示された適正な浮力の前・後およそ5リッターというのが定説になっているようですので、あくまでも参考として考えると良いと思います。

 

2. 一般的な適正浮力は初心者には無関係 

適正浮力のボードではなにが問題なのでしょうか。適正なのに、ちょっと変ですよね?

前段で触れたように、それは示された浮力の数値自体の問題ではなく、サーファー個人の体格、体力、技術、サーフィンスタイルに個体差があるので、平均値としての適正浮力が、必ずしもある1人のサーファー、すなわち、あなたにとっての適正浮力とは限らないということですね。

まず浮力がサーフィンにどう変化と影響を与えるのかを考えてみたいと思います。

浮力が大きいことの効果ってなんでしょう?

大きく2つ挙げられると思います。

パドリングによるボードスピードを得やすい、

波からボードに伝わって得られるボードへの推進力が大きい、

以上の2つが考えられます。 

では、それでどんなメリットがあるのでしょうか?

その最大のメリットは、テイクオフできる可能性が高くなることです。

ボードスピードが得やすく、波の力を得やすいので、小さなパドリングの力でもテイクオフが可能になります。初心者のパドリング技術でもより安定した体勢でパドリングできるので、初心者でも比較的楽にスピードを得ることができます。

つまり、狙った波を確実にとらえて、テイクオフまで持っていくことができると考えてよいと思います。それで初心者の練習に適した、パワーのない小さな波でもテイクオフしやすくなるというわけです。当然、ボードの上に立つという動作までを練習する回数も増えて、早く上達できます。

ただし、事前に考慮に入れておくべき点として、上達が早くなれば、当然ターンやカットなどに挑戦し、徐々に自分のものにしていくことになるわけです。そうなると、今度はこの浮力ゆえに、ターンがしづらいなど、技を繰り出すときにボードの動きが重く感じられるようになる時期がきます。 

上達のスピードは人それぞれですが、比較的高頻度で海に行けて陸トレもする意欲がある方で、その練習量と体力からすぐ上達する可能性がある方以外はあまり最初からそれを考える必要はないかもしれません。

また、サーファーの技術にかかわらず、海に行ける日がパワーのない小さな波しかない時は誰にもよくあることですので、そんなときには浮力があるボードが活躍します。結局、浮力のあるボードはなんだかんだ長く使えると思います。

上達したらそれとは別に自分の技術にあった2枚目のボードをゲットするといいかもしれません。

 

3. 初心者は浮力の大きい楽しめるボードを選ぼう

サーフィン

これまでのことを考えあわせてみると、初心者として何を目標とするのかを自分の中で明確にすることが大事だと思います。

この目標の捕らえ方を早く波に乗って、テイクオフする感覚を覚えたいとするならば、より浮力の大きいボードが有利であるということに間違いはありません。

パドリングの体制が維持しやすい安定性、そこから得られるボードスピード、その結果により多くの波にテイクオフするチャンスが増える。このポジティブスパイラルが得られる浮力の大きなボードは魅力的だと思います。

今、自分がどのような熟練度にあって、何を目標にするか、これをはっきりと自分の中にもつことが大事ですね。

コスパも考慮すると、ゆくゆくはショートボードに乗りたい方向けのファーストボードとして、最近はやりのミッドレングスのソフトボードなどもおすすめできます。