「ロングボードは歳を取ってからでいい」「ロングボードは簡単だろう」「まだロングボードには乗りたくない」など耳にしたり、考えたりすることがありませんか?

今回はそんな人に読んでほしい記事です。

ロングボードとは、通常長さが9 ft (274.3cm)以上のものが一般的です。ショートボードに比べて長さと厚みと重さのあるロングボードは、浮力が強く、安定していて、ショートボードよりも比較的に苦労することなく波乗りを楽しむことができるのがひとつの魅力ですが、それだけがロングボードの魅力ではありません。

ロングボーダーがライディングしている様子を見ていると、クラシックでありながら、スタイリッシュであり、エレガントさも感じられます。

そんなロングボードの魅力について考えてみましょう。

1. ロングボードは奥が深い

たしかに、ロングボードはショートボードに比べて波を捉えやすく、安定するので板の上に立つことも比較的容易です。これは波乗りを始める人にとっては大きな魅力です。そういう意味において簡単だと言うことができるでしょうし、初心者に優しいボードといえると思います。

ただし、もしあなたが『ただ波に乗れればいい』のではなく、ロングボードのならではのパフォーマンス、ハングファイブやハングテン、ウォーキングの習得を目指すのであれば、テイクオフの位置、テイクオフしてからの動作がとても重要で、習得には長い時間がかかるものです。

初心者のうちは、テイクオフはできても、テイクオフした後何もできないはずです。

技術が向上するにつれてボード上での様々な技にチャレンジしたり、長くて厚くて重いロングボードをまるでショートボードを扱っているかのような動きをしてみせたりと、極めれば極めるほど自由度の高い世界が広がっていくのが感じられると思います。

間口が広くて、誰でも入りやすい入り口があって、一旦入ってみると奥が深い、それがロングボードの世界です。

 

2. ロングボードだからできること

掘れない厚い波でもテイクオフできて波乗りを楽しむことができること、ショートボードではとても乗れそうもないブレイク前のアウトの波をとらえること、インサイドの膝下の小さな波に乗ることなど、様々な意見があります。

それらに共通するのは、波のパワーを強く受けてボードに運ばれるような感覚ではないかと思います。

ショートボードでは得られない、足元からの強い浮力、そしてボードが自分を運んでくれると言う自然の力との一体感を感じること、そこがショートボードとの大きな違いを感じられるポイントだと思います。

十分に波のパワーを感じて波と一体化する爽快さは波乗りの真骨頂です。
ロングボードは波乗りの本当の楽しさを比較的簡単に味わえると言えるのではないでしょうか。

ハングファイブやハングテンなどのパフォーマンスやマニューバーの追及はもちろん、上級者になれば大きなサイズの波にもチャレンジできます。

サーファーの体力や技量に応じた多彩な楽しみ方ができるのは、ロングボードの魅力です。

 

3. ロングボードを選ぶ理由

プロの世界を覗いてみると、一般的にロングボードはショートボードに比べて大会の数も、賞金の額も、恵まれているとはいえない実情があります。

オリンピックの競技の中でも、ショートボードしか取り上げられていません。それでも、本業を持ちつつ、プロとしてキャリアを積んでいる多くのプロロングボーダーがいます。中には、ショートとロングと、両方の世界で活躍するサーファーもいます。彼らがあえてロングボードを選んだのは、どういう理由があったのでしょう?

たしかに初心者にもアプローチしやすいロングボードですが、上達すればするほどに難しさを発見するのもロングボードです。

ロングボードにはロングボードなりの美しいライディングスタイルというものがあります。

波をとらえて、テイクオフ、そしてボトムターンからまるでショートボードを操るかのような豪快なマニューバーというスタイルもあり、またボードをコントロールしながらの流麗なクロスステップからハングテンやハングファイブなどボード上でポーズを決めながらのパフォーマンススタイルというのもあり、サーファーの技術とイマジネーション次第のライディングスタイルはサーフィンの伝統と歴史をほうふつとさせるものであり、同時に最新のライディングテクニックも存在します。

つまり、ショートボードではできないロングボードならではのライディングスタイルがあり、それは一見簡単そうに見えますが、実は極めれば極めるほど奥の深さを発見するものなのです。ショートボードに比べてテイクオフが簡単だということもできますが、同じテイクオフであってもボードの上に立てればいいという初心者クラスのそれと、そこから流れるようなステップでハングテンを決めるという上級者のそれとではタイミングやボード上でのポジショニング、さらにはボードコントロールなどまったくの別次元と言えるほどの違いがあります。

このようなテクニックやパフォーマンスに熟練するまでのプロセスはショートボードとまったく変わりません。日々のトレーニングと努力の積み重ねなくしては得られるものではないのです。自然と調和し、自己と対峙し、ロングボードならではのサーフィンスタイルを追及する楽しみこそロングボードを選択する理由であると言えるでしょう。

 

4. ロールモデルとしてのロングボーダー

それでは、数多くの才能あるロングボーダーの中から、モチベーションに繋がるようなライディングを見せてくれるロングボーダーを数人ご紹介します。

 

ジョエル・チューダー

ジョエル・チューダーは1998年に初のロングボード世界選手権で優勝、2004年に2度目の優勝を果たし、最近では2021年10月に、長年VANsのアンバサダーを務める彼が45歳にして3度目のタイトルを掴みました。 

ジョエル・チューダーは地球上で最も認知度の高いサーファーの一人です。彼のスタイルは、豊富な天賦の才能と、ドナルド・タカヤマやナット・ヤングといったレジェンドの指導によって磨き上げられたものです。

 

ハリソン・ローチ

ハリソン・ローチはとてもバランスの取れたサーファーです。彼は長いロングボードから短いフィッシュまで乗りこなします。彼のスタイルはとてもスーパースムーズなものから狂気じみた激しいものまで幅広く、それらの幅広いスタイルを融合させることができる非常に少ないサーファーの一人です。

彼が今後ロングボードサーフィンをどのように進化させていくのか楽しみです。

 

ホノルア・ブロムフィールド

ホノルア・ブロムフィールドは2017年にロングボード世界選手権で初優勝しています。彼女のサーフィンは長身がもたらす特有のスタイルと優雅さを擬人化したようなもので、長身の体をごく少数のサーファーのみができる方法で動かしています。

ノーズに乗ることはホノルアにとって第二の天性であり、ハングテンをいとも簡単にやってのけ、スタイリッシュです。

 

アンディ・ニエブレス

フロントジッパーのウェットスーツジャケットから探偵風の口ひげまで、彼のすべてがスタイルにあふれています。そして、ユーモアあふれるライディングも素晴らしい。彼のライディングは、次にどんなパフォーマンスを繰り広げるのかヒヤヒヤワクワクさせてくれます。

加えて、彼は締まったコンパクトな体型ですが、重いシングルフィンを使ったパワフルなターンはその体型を感じさません。

 

まとめ

注目を浴びることの多いショートボードに比べて、あまり陽の目を浴びないロングボードですが、サーファーの熟練のレベルや体力、波のコンディションに応じて多様な楽しみ方ができます。成長のプロセスから得られる精神的充足感や肩肘張らない癒しの世界観もロングボードならではの魅力です。みなさんも深いロングボードの世界にハマってみてはいかがでしょうか。