波が怖い人に試してほしいこと
サーフィンに限らず、スポーツにおける恐怖心との戦いは避けられないものです。競い合う相手が人である場合はもちろんですが、単独の競技であっても自分の内面との戦いの中には常に恐怖心が付きまといます。恐怖心を克服するには、まず恐怖心を理解して、どうしたら過度の恐怖心を抑えることが出来るのかを考えてみることが必要です。
1. 恐怖心とは
恐怖心とは、目前で起きている、もしくは起きようとしている事態に対して、それにうまく対応できないのではないかという不安から極度の緊張感が発生し、失敗の予測を立て、それを回避しようとするもので、誰もが持ちうるものです。危険回避のための本能的反射と言うこともできると思います。
人の持つ生存本能ゆえの危険回避行動に必要なものなので、特別なことではありません。
もし、恐怖心を持つことがなければ、危険を事前に察知、もしくは予測し、命を守ることができなくなることも考えられます。むしろ無いほうが異常といってもいいと思います。
2. 波に対する恐怖心を分析してみよう
わたしたちがサーフィンにおいて感じる恐怖の根源も同じで、最終的には怪我や溺れるなどして、命に危険が迫るのではないかと言うものだと思います。
たとえば、パーリングして前のめりになってボードと一緒に波にもまれることを経験すると、ボードのレールやフィンなどにぶつかって痛い思いをしたり、怪我をしたりするのではないかという不安を持つようになります。
一度そういった恐怖心を持ってしまうと、テイクオフのときにも思い切って波の先に出ることを躊躇してしまいます。無意識のうちに重心が後ろになっていて、腰が引けてしまうので結果的にノーズが浮いてテイルが沈んでしまい十分なボードスピードが得られないまま無理にテイクオフにもっていくか、失速して波を逃すことになります。
この状態で、迷いがあるまま無理にテイクオフするとレイトテイクオフ気味になり、リップとともに放り出されて波に揉まれる羽目になります。
波のサイズと力によっては、海底にたたきつけられて、左右上下の方向感覚を失いながら、息ができないという焦る気持の中で、もがくだけもがいても海面に浮かび上がることができなくなります。(ブレイクが水面に当たりホワイトウォータになった部分は空気と海水が入り混じるので、そこでは人間の比重のほうが重くなるので、ウェットを着ていても浮かぶことができなくなります)
こういうときは、落ち着いて波が通り過ぎたときに息継ぎをして、セットが通り過ぎるのを待ってゆっくりと海面に戻ればいいのですが、そういう冷静さを奪ってしまうのが恐怖心の真の怖さだと言えるでしょう。
3. 恐怖心に対する考え方
スポーツの上達の過程では、常に新たな課題に挑戦し、それをクリアするというプロセスの繰り返しを経験します。できないものを、できるようにするためには避けては通れません。成功は度重なる失敗の末に辿りつくのが普通です。
失敗の経験の中で、痛みや、怪我や、恐怖を覚える経験をします。この失敗の経験をすることで、失敗する不安と、失敗の恐怖が生まれるようになります。
なぜならば、それは失敗の原因が、乗り越えるべき課題に対して自分が未熟であることを実感し、同じ挑戦を繰り返すのは同じ失敗を繰り返すことであり、最挑戦することが危険だと感じるので、避けるべきだと判断するからだと思います。
ここで挑戦を止めてしまえば、危険は無くなるわけで、止めてしまうと言うのが最も簡単な解決法と言うことになりますが、それでは上達を諦めることになってしまいます。ですから上達をするためには、必ず恐怖心との闘いを克服しなければならないと言うことです。
4. 克服するには
ます失敗の理由を考えますと、フィジカルとメンタルの大きく二つの要素に分かれます。
フィジカルというのは、言い換えれば成功するために必要な体力や技術であり、メンタルとは冷静客観的な状況判断と困難に立ち向かう精神力です。
経験値を上げて技術(体力/技量)を磨く
フィジカルにおける解決は、体力向上の為のトレーニングと、練習の繰り返しによる技術の向上によって図ります。体幹や全身の筋力を向上させ、バランス感覚を磨き、持久力をつけることが考えられます。
技術の向上のためには一般的には反復練習が必要になります。ここがポイントで、
海の上では反復練習が難しいので、体の使い方が似ているサーフスケートなどで練習することをお勧めします。「サーフィン上達のメカニズムを理解しよう」も参考にしてください。
こういったフィジカルの改善によって、失敗の恐怖心を乗り越えることができ、自信の回復が期待できます。
メンタルの改善は、このフィジカルの改善による自信の回復で軽減されることが多いのですが、それで完全な解決がなされるわけではないのが一般的です。
一度感じた失敗による恐怖感は、十分なフィジカルの改善が為されたとしてもそれたけで消えるとは限りません。十分な技術と体力があるのに、失敗の恐怖があってそれを発揮できないことがあるからです。
恐怖心の克服は、自分の内面に潜む恐怖心との闘いを制し、十分に鍛えた体力と技術を発揮することで、失敗体験を成功体験に塗り替えて、成功を常態化させることでしか図れないということです。
プロアスリートや上級者の中には、ヨガや瞑想などを取り入れる人が多くいます。
ヨガや瞑想はメンタル、フィジカルの両方に強く働きかけて、精神と肉体の調和、自然との融合、ひいては恐怖心や不安感をコントロールできるように感じられるためです。「ヨガがサーフィンにもたらす効果」も併せてご覧ください。
まとめ
失敗の本質を見据えて分析すること、そして身体を鍛え、自分の内面と向き合うことで初めて恐怖心を乗り越えることができます。
それは、恐怖心を抱く対象は違えど、初心者から上級者、プロまでのどのアスリートにも共通することです。
ライフワークの一部として日々努力を続けるうちに、恐怖心も薄れ乗りこなせる波も増えていくはずです。