サーフィン上達のメカニズムを理解しよう
サーフィンを始めたのはいいけれど、なかなか上達できない、上達している実感がない、どうしたら早く波に乗れるようになるの?効果的な練習法って?そう思う人は少なくないと思います。
毎日海に出ることができる環境にある人はごく一部で、一般的には休日や週末に車や公共輸送機関を使って海に出ることができるという状況にある方が圧倒的多数を占めているのではないでしょうか?
そういう限られた条件の中で、少しでも早くサーフィンの上達を図るにはどうしたらいいでしょう?少し考えてみたいと思います。
1. ほかのスポーツと違うところ
たとえば他の競技人口の多そうなスポーツを考えてみてください。野球やサッカー、バスケットボールなどの球技や柔道や空手などの格闘技、レジャーとしても広く普及しているボーリングや卓球、どれもわざわざ海に出るような手間も時間もかかりません。ゴルフなどはコースに出て実戦となるとたしかに大変そうですが、素振りは自宅でもできますし、練習場は比較的街中に見られるのではないでしょうか?
1.1. 環境の特殊性
まず、サーフィンがほかのスポーツと大きく異なる点といえば、スポーツを行う環境の特殊性が挙げられると思います。ロケーションとして海という場所まで移動しなければなりませんし、天候や海のコンディションという自然の要素に大きく左右されます。最近でこそ人口のサーフィン施設もできていますが、それでも水泳や飛び込みができるプールと比べれば圧倒的にその数は少ないのが現状です。
このように、日常の生活とはかなりかけ離れた環境の中で行うスポーツだという点がほかのスポーツとは違うと思います。
1.2. 自然を相手にする特殊性
サーフィンは自然が作り出す波の上でするのですから、当たり前ですが、ここが他のスポーツとは決定的に違います。波は常に動いていて、その波にあわせた適切な動作をするというのは容易いものではありません。
筋力アップや心肺機能を高めるための補足的トレーニングでしたら、普段の日常的生活の中で行うことは可能ですが、サーフィン自体を行えるわけではありません。
サーフィンの動作そのものが、動く波の上で行われるものなので、日常生活の中で再現することができないというのが他のスポーツとの大きな違いだといえると思います。
バットやラケットを振ったり、パスの練習や基本の型の練習をしたり、ほかのスポーツなら日常生活の中で再現しようとすればかなり近いものが再現できますが、水の上で行うサーフィンはそうはいきません。
スポーツにおける上達とは反復練習における成功体験の積み重ねによる技術の常態化だといえると思うのですが、この部分がサーフィンが上達の困難なスポーツであるとされるゆえんの大きな要素ではないかと思います。
以上のように、サーフィンのスポーツとしての特殊性により、練習の機会を得ることが困難ですから、練習をすること自体もそうですが、波の上で体得した感覚を維持することが非常に難しいので、なかなか上達の実感を得る機会もなければ、せっかく実感した波の上での感覚さえも失いやすいというところがなかなか上達に結びつかない原因であり、ともすれば途中でいやになってしまうことも少なくはない原因なのではないでしょうか。
2. サーフィンの上達のメカニズムと上達が難しいといわれる理由
それでは、どうしたら上達することができるのでしょう?
海から遠くに住む人は諦めるほかないのでしょうか。それとも強い意志だけで乗り越えるほかないのでしょうか?
ここで、サーフィン上達のメカニズムについて考えながら、その解決法としてのサーフィン上達のポイントについて触れてみたいと思います。
2.1. 上達のメカニズム
海のすぐ近くに住んでいて、毎日海に出てサーフィンができるとしたら、きっと上達が早いはず。そう思いませんか?
個人差はありますが、同じ人で考えた場合、当然毎日海に出ることができる環境にあるほうが上達は早いです。それはなぜでしょう?
スポーツの技術における上達とは、目的とする動作の反復によって、より多くの成功と失敗を繰り返し、その成功体験の中から成功の理由を知り、成功体験をより多く経験することによって成功動作を体に記憶させる。それによって、正しい動作が常態化するので上達したという実感を得る。そういうメカニズムにほかなりません。
2.2. 上達が難しいといわれる理由
そう考えると、サーフィンの上達が困難だとされる理由は2つです。
第一に、動作の反復の絶対数が少ない。第二に、それによって、成功体験を得ることがさらに少ない。
ここがサーフィンの上達が困難だとされるポイントだと思います。
このように、理由に気付いたならば、その原因を少しでも克服する手段をとることを考えることで上達のしかたが変わるはずです。
3. サーフィン上達のための最初の目標と工夫
まずサーフィンの上達を実感することの難しさが、ほかのスポーツと違う特殊性に原因があるというのは前述の通りですが、それを克服する方法を考えて見ましょう。
3.1.上達のための最初の目標
最初に上達を感じるポイントというと
まずはこのあたりを目標にするとよい思います。
これらの動作を確実に安定して行うことができるように練習しましょう。ここまで来ると、波乗りの楽しみが大きく膨らみますよ!
3.2. 上達の工夫について
海に出られる機会が少ない場合は、少ない反復回数の中で、いかにして成功体験を増やし、それを体に覚えさせることができるか、ということがテーマになると思います。
心がけることは大きく2点あります。
この2点を心がけることで、上達の速度や実感の得られ方が変わります。
それでは、これらを実現するためにどう工夫すれば良いか考えましょう。
適切なボード選び
最初に手にするボードが上級者用の浮力の少ないショートボードでは時間がかかってしまいます。おすすめは自分の身長より30~50cm以上の長さのミッドレングスかミニロングボードのタイプのもので、浮力や安定性に優れていて、波を捉えやすく、テイクオフまでの動作も行いやすいというメリットがあります。ただし、ショートボードに乗りたい方にとってはゲッティングアウトの際の技術を得にくいというデメリットがありますが、最初のボードとしては断然浮力と安定性があるものがおすすめです。
基礎体力アップ(体幹、バランス感覚、泳力)
ゲッティングアウトやテイクオフの際のパドリングやライディング中の動作など、サーフィンに必要な基礎体力が高いほど上達にかかる時間は短くなります。バランス感覚には強い体幹があることが有利になります。筋力トレーニングやバーピー運動、プールでのスイミングなど海に出ない時間でできる基礎体力作りは上達の時間を短縮するのに有効です。
サーフィンの動作の感覚に近い感覚を得ることができる練習法
スケートボードやスノーボードは、上体のリード(目線、腕や肩の使い方)から始まって、腰の回転、膝の使い方を一連の動きとして行うことで体重移動をボードに伝える感覚がサーフィンと共通します。サーフィンを始めるにあたって同時に始めることも上達のための時間の短縮につながります。
もちろん練習場所の安全性に注意して十分な転倒対策をしておくことが前提です。好みによりますが、スケートボードではサーフスケートのほうがよりサーフィンの感覚に近くなるのでおすすめです。
イメージトレーニング
スケートボードやスノーボードに乗る際には、波に乗っているイメージを持ちながら乗ると、波の上で得た感覚がとどまりやすくなる傾向にあります。
日常生活の中でもサーフィンの動画や映画を観たりしながら、波に乗っている感覚を思い出したりするのも大事なことです。
体の中の波の上で得た記憶を少しでも思い起こして、とどめる工夫をするイメージトレーニングは一度得た波乗りの感覚を忘れづらくすることで、上達ための大きな助けになります。
動画を撮る
サーフィンしている間に自分で得る感覚はどうしても主観的になりがちです。できれば自分の海上での全ての動作を記録できると、癖や悪い点を客観的に捉えやすくなるので、もし機会があれば動画を撮っておいて、普段繰り返し観て、自分の動作を改善すると上達の助けになります。
課題を持って
漫然と海に出るのではなく、毎回なんらかの目標を持ってでると意識が集中しやすくなります。『今日はパドリングの速度に集中してみよう』といったものでもいいですし、動作の改善の目標でもいいですし、なにか目標や課題を持って海に出ることで、海での時間の使い方を効率的であり効果の高いものにすることができます。
日記をつける
海に出た日や、日常の中で思いついたことなどを文字で記録に残すと、波の上での感覚を想起させることにつながり、その感覚を忘れないようにする助けになります。なにより記念や思い出にもなりますので、サーフィンを始めるときにサーフィン日記を書き始めることはおすすめです。
以上のほかにも、波や海の読み方、ポイントでの波の選び方、上級者の波乗りの研究をすることも上達の役に立ちますので、あらゆる方法で工夫をしてみましょう。
テイクオフができて、ボトムターンからフェイスを捉えるなどの動作はこのすぐ先にあります。なにより、意識をしっかり持って、諦めず続けることが上達に必要なことです。
最後に、ここまで読んでいただいた方の中にはサーフィンってやること多いなと思われる方もいるかもしれません。
ですが、実際のところ、海に行くことさえ辞めなければ、海と波による自然との対話の中で体力はかなり向上しますし、メローな波でサーフィンを楽しむ程度に上達していきます。そこまで来たときに、陸トレしてみようかなと考える程度で十分です。ここでは早く上達するために工夫できる事についてお伝えしましたが、焦らず自分のペースで自分のサーフィンを楽しんでみてくださいね。