パドリングは「力」や「筋力」ではありません。大事なのは、ボードの浮力と海の力をうまく使うこと、そして沖に向かう漕ぎ方と波をつかむ漕ぎ方の2つを使い分けることです。これを知るだけで、パドリングはぐっとラクになります。この記事では、疲れない漕ぎ方のコツを具体的にお伝えします。
パドリングとは?力より大事なものがある
パドリング(腕をかいてボードを進めること)は、ボードの上に腹ばいになって水をかき、前に進む動きです。沖へ向かうときも、波をキャッチするときも、すべての土台になります。
「パドル力」「パドル筋」とよく言われますが、じつは筋力や経験はあまり関係ありません。大事なのはボードのボリューム(浮力)と海の力の2つです。筋力や経験が占める割合は、多くても2割ほどです。
小さな子どもでも、女性でも、年配の方でも波をつかまえています。もしパドリングが筋力勝負なら、大人より子どものほうが速い理由を説明できません。浮力のあるソフトボードが、誰でもスムーズに漕げて波をつかみやすいのは、この浮力のおかげです。
ソフトボードとハードボードで漕ぎ方は変わる?
基本は同じです。ソフトボードもハードボードも、パドリングのやり方を分ける必要はありません。ただし、ボードのサイズや形、ボリュームによって漕ぎ方は少し調整します。ソフト・ハードの違いはソフトボードのメリット・デメリットもどうぞ。
パドリングは2種類ある(ここが一番大事)
パドリングには、目的の違う2つの漕ぎ方があります。これを使い分けるのが、疲れずに波をつかむ最大のコツです。
- 沖へ向かう漕ぎ方(ゲッティングアウト):陸でいう「ジョギング」。体力を温存して、ゆったりリラックスして漕ぎます
- 波をつかむ漕ぎ方(テイクオフ):陸でいう「100m走」。短く集中して、しっかり漕ぎます
岸から波が割れる場所までは、ビーチブレイクなら数十メートル、リーフブレイクなら数百メートル進むこともあります。どこへ向かうかは乗れる波を見極める方法も参考になります。
沖へ向かう漕ぎ方(疲れない7つのコツ)
沖へ向かうときは、とにかくリラックス。次の7つを意識すると、500m以上のポイントでも疲れにくくなります。
- 足を閉じる
- 背中は無理に反らさない
- リラックスする
- 呼吸をしながら漕ぐ
- 小指から水に入れる
- 浅く漕ぐ
- 肘を引くように漕ぐ
理由は「使う筋肉の違い」です。速く強く漕ごうとすると、息が止まり、体が強張り、上腕の小さな筋肉ばかり使ってすぐに疲れます。いっぽう、小指から入れて肘を引くと、背中の大きな筋肉(広背筋など)を使えます。大きな筋肉は乳酸がたまりにくいので、長い距離を漕いでも疲れません。
大事なのは、リラックスして大きな筋肉で漕ぐこと。この7つはそのための具体的な方法です。
波をつかむ漕ぎ方(テイクオフの5つのコツ)
波をキャッチするときは、沖へ向かうときより深く、集中して漕ぎます。次の5つがコツです。
- 足を閉じる(バタ足しない)
- 深く漕ぐ
- アゴはボードにつけない
- 重心はテール側に置くことを意識する
- なるべく笑顔で
よくある失敗は、速く乗ろうとして前のめりになること。波は後ろから前へ進むので、テール側を少し沈めると、波がボードを上手に押してくれます。
そして、笑顔も立派なコツです。笑顔は体の力みをほどき、視野を広く保ってくれます。そのあとのライディングで行きたい方向へ進みやすくなります。テイクオフ全体のコツはテイクオフのコツ、波をつかまえやすいボード選びはテイクオフがはやいサーフボードの見極め方もどうぞ。
速く漕がないほうが、じつは進む
焦って速く漕ぐと、体が強張り、関節の可動域が狭くなり、かえって波をつかめなくなります。理由は3つあります。
ボードがブレて推進力が逃げる
力で漕ごうとすると腕を伸ばし、体の軸がズレます。その力がボードに伝わって左右にブレ、前に進む力が逃げてしまいます。スムーズに漕ぐほうが、結果的に速く進みます。
速さを求めると肩を回してしまう
回転数を上げれば速くなる、と思いがちです(自転車でいう「ケイデンス」)。私たちも最初はそう思っていました。ですがパドリングは、腕を回すのではなく、ボードの下に水流を生んで進みます。回転数を上げようとすると肩を回しがちですが、肩関節は本来そういう動きが得意ではなく、痛めやすくなります。サーファーに肩のトラブルが多いのはこのためです。
ゆっくり一定のリズムで漕ぐ
回転数ではなく、一定のリズムで漕ぐと推進力が生まれます。自転車でいう「重いギアで漕ぐ」イメージです。漕ぎ出しはゆっくりでも、2回3回と漕ぐうちに軽くなっていきます。肩を回すのではなく、歩くときのように肘を引いて、リズムよく。小指から入れて肘で引くと、自然にリズムが整います。
ボードに合わせて漕ぎ方を変える
パドリングはボードに合わせて変えると、うまくいきます。競技サーファーの漕ぎ方は競技用ボードに合わせたもので、一般サーファーとは目的もボードも違います。ひとつの形にこだわりすぎず、乗っているボードに合わせて調整する意識が大切です。浮力のあるミッドレングスなどは、ゆったり漕いでも進みやすいボードです。
ソフトボードで安定して漕ぐ4つのコツ
ソフトボードはボリュームが大きく、水に浮く力が強いボードです。浮いている部分が大きいぶん、力を入れず浅く漕ぐだけで進みます。次の4つを意識すると安定します。
- ストロークを長く:回転数を上げず、右・左とゆっくりリズムよく漕ぐ
- 小指から入れて肘で引く:疲れにくく、まっすぐ進みやすい
- アゴをつけない:浮力が強いぶんアゴで押さえがち。つけると肩を痛めたり、テールが浮いて波に置いていかれます
- リラックスして漕ぐ:いちばん大事。力まないほうが進みます
ソフトボードはリラックスして乗るスタイルと相性がよく、パドリングの練習にも向いています。これから始める方はサーフィン初心者の始め方ガイド、海でつい力んでしまう方は波が怖い人に試してほしいこともあわせてどうぞ。自分に合う1本は初心者向けソフトボード一覧から探せます。
水泳のクロールとは別物
パドリングは水泳のクロールと似て見えますが、体の使い方は大きく違います。クロールは体を縦軸で左右に入れ替える「回転運動」です。推進力は高いですが、運動の仕組みが違います。
パドリングはボードの上で水面と平行に進む「平行運動」です。ボードにブレを伝えないよう、左右の軸は入れ替えません。クロールの感覚で漕ぐとボードがブレるので、別物として覚えておくとうまくいきます。
まとめ
- 沖へ向かうパドリングは、ゆったりリラックスして漕ぐ
- 波をつかむパドリングは、腕を深く入れて集中して漕ぐ
- ソフトボードは浮力が大きく、パドリングの練習に向いている
- 何より大切なのは、力まずリラックスすること
力を抜いて、ボードの浮力と海の力に任せる。これが、疲れずに長くサーフィンを楽しむいちばんのコツです。
よくある質問
Q: パドリングは筋力がないと進みませんか?
A: 筋力はあまり関係ありません。大事なのはボードの浮力と海の力で、筋力や経験が占める割合は多くても2割ほどです。子どもや年配の方も波をつかまえています。
Q: 速く漕いでいるのに進まないのはなぜ?
A: 速く漕ぐと体の軸がズレてボードが左右にブレ、推進力が逃げます。回転数を上げるより、一定のリズムでゆっくり漕ぐほうが進みます。
Q: 沖へ向かうときと波をつかむときで漕ぎ方は違いますか?
A: 違います。沖へはジョギングのようにゆったり、波をつかむときは100m走のように深く集中して漕ぎます。この2つの使い分けがいちばんのコツです。
Q: ソフトボードとハードボードで漕ぎ方は変えるべき?
A: 基本は同じです。ただしソフトボードは浮力が強いぶん、浅くゆっくり漕ぐと安定します。アゴをつけないことも意識してください。
Q: パドリングで肩を痛めないコツは?
A: 肩を回そうとしないことです。肩関節は回す動きが得意ではありません。小指から入れて肘を引き、一定のリズムで漕ぐと肩に負担がかかりにくくなります。
Q: ボードのサイズで漕ぎ方は変わりますか?
A: 基本は同じですが、ボリュームの大きいボードほど浅くゆっくり、ストロークを長く漕ぐと安定します。小さめのボードは少し深めに漕ぐと進みやすくなります。
Q: パドリングは陸でも練習できますか?
A: 動きのイメージづくりはできます。床にうつ伏せになり、小指から入れて肘を引く動きをなぞると、海での感覚がつかみやすくなります。ただし推進力は海でしか得られないので、最後は海で慣れるのが近道です。
Q: クロールが得意なら、パドリングも上手ですか?
A: 別物です。クロールは回転運動、パドリングは水面と平行に進む運動です。クロールの感覚で漕ぐとボードがブレやすいので、別の動きとして覚えるとうまくいきます。
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記事を書いた人
Beach Access 編集部
ソフトボードを扱い、サーフィン歴20年以上のメンバーも在籍する編集部です。実際に海で乗った経験と製品知識をもとに執筆しています。
