ウェットスーツのメンテナンス完全ガイド:長持ちさせる洗い方と保管方法
サーフィンの必須アイテムであるウェットスーツ。正しくお手入れをすることで、性能を長く保ち、寿命を延ばすことができます。この記事では、ウェットスーツの洗い方や乾かし方、保管方法などのメンテナンス方法を初心者にもわかりやすく解説します。
もっと詳しく知りたい方へ: ウェットスーツの基本から選び方まで包括的に解説したサーフィン ウェットスーツ完全ガイドもご覧ください。
ウェットスーツの正しい洗い方

ウェットスーツは使用後すぐに真水ですすぐことが大切です
使用後のすすぎ方
ウェットスーツのメンテナンスで最も重要なのは、使用後すぐに真水ですすぐことです。海から上がったら、なるべく早くウェットスーツ全体を真水で洗い流しましょう。これにより、素材を傷める原因となる塩分や砂を除去できます。
ポイント! 特にファスナー周りや起毛素材などの裏地は塩分や砂が残りやすいので、念入りに洗い流しましょう。塩分が残ると、乾燥するときに結晶化して素材を傷めてしまいます。
洗う際の基本ルールは以下の通りです:
- 必ず手洗いする:洗濯機や乾燥機は絶対に使わないでください。生地が傷んだり、形が崩れたりする原因になります。
- 水温に注意する:熱いお湯は使わず、水またはぬるま湯(人肌程度)で洗いましょう。熱はネオプレン素材を劣化させ、パネルの接着部分を弱めます。
- 優しく洗う:強くこすったり、足で踏んだりせず、優しく「押し洗い」または「揉み洗い」をします。特に縫い目や接着部分に負担をかけないようにしましょう。
スーツが十分浸かる大きさのバケツやタライを用意し、ウェットスーツの表と裏の両面を丁寧に洗うと良いでしょう。特に汚れがひどい場合は、洗う前に1〜2時間ほど真水に浸け置きするのも効果的です。
専用シャンプーの使い方

専用シャンプーを使うと素材の柔軟性を保ち、嫌な臭いも防げます
毎回の使用後に必須ではありませんが、ウェットスーツ専用のシャンプーやソフナーを使うと、より効果的にメンテナンスできます。専用シャンプーには以下のようなメリットがあります:
- 真水だけでは落ちにくい皮脂汚れや日焼け止め、サーフワックスの残りなどを効果的に洗浄できる
- 抗菌・消臭成分が含まれているため、雑菌の繁殖を抑え、嫌な臭いを防ぐ
- 専用ソフナー(柔軟剤)は、ネオプレンゴムの柔軟性を維持し、硬化やひび割れを防ぐ
注意! 家庭用の洗濯洗剤や柔軟剤は使わないでください。ウェットスーツの素材を傷める可能性があります。必ずウェットスーツ専用の製品を使いましょう。
専用シャンプーとソフナーの基本的な使い方は以下の通りです:
- まずシャンプーを溶かした水(またはぬるま湯)でウェットスーツを優しく洗う
- きれいな水でシャンプー成分を完全にすすぐ
- 新しい水に規定量のソフナーを溶かし、スーツを5〜10分程度浸け置きする
- ソフナー使用後は、すすがずにそのまま干す(製品によって指示が異なる場合があるので説明書を確認してください)
専用シャンプーとソフナーは頻繁に使う必要はなく、2〜3回に1回程度、あるいは月に1回程度で十分とされています。特にシーズンオフなど長期間保管する前には、しっかりと洗浄・ケアしておくことをおすすめします。
ウェットスーツの適切な乾かし方

洗い終わったウェットスーツを適切に乾かすことは、洗浄と同じくらい重要です。正しく乾かすことで素材の劣化を防ぎ、寿命を延ばすことができます。
ウェットスーツの干し方のコツ
ウェットスーツを干す際の最も重要なポイントは、絶対に直射日光を避けることです。紫外線はネオプレン素材にとって最大の敵であり、ゴムの劣化、硬化、ひび割れ、色褪せを急速に引き起こします。
ポイント! 風通しの良い日陰を選んで干しましょう。屋外で干す場合は、日中の動きによって直射日光が当たらないように注意してください。窓からの反射光にも気をつけましょう。
また、干す順序も重要です。まずはウェットスーツを裏返しにして干すことをおすすめします。これにより、肌に直接触れる内側の生地(ライニング)が先に乾きます。内側が湿ったままだと、次に着るときに不快なだけでなく、雑菌が繁殖しやすくなります。
内側が完全に乾いたら、スーツを表に返して、外側もしっかりと乾かしましょう。見た目が乾いているように見えても、生地の内部や縫い目にはまだ水分が残っていることがあります。保管する前には、内側も外側も完全に乾いていることを確認してください。
専用ハンガーの重要性
肩幅の広い専用ハンガーを使うと型崩れを防げます
洗った直後のウェットスーツは水分を含んで非常に重くなっています。そのため、肩部分が幅広で頑丈なウェットスーツ専用ハンガーを使用することが不可欠です。
注意! クリーニング店で使われるような細いワイヤーハンガーや、肩幅の狭いハンガーは、重みで肩部分のネオプレンが伸びたり、薄くなったり、最悪の場合裂けてしまう原因となります。
幅広のハンガーは重さを分散させ、型崩れを防ぎます。また、ハンガーによっては、スーツ内部の空気の流れを良くして乾燥を早めるデザインのものもあります。
適切なハンガーがない場合は、太めの物干し竿やバーに、ウエスト部分で二つ折りにして掛ける方法もありますが、その際はファスナー部分などに無理な折り目がつかないように注意が必要です。細い物干しロープなどに首や肩だけで引っ掛けるのは避けましょう。
ウェットスーツの保管方法
適切に保管することでウェットスーツの寿命を延ばせます
シーズンオフなど、ウェットスーツを長期間使用しない場合の保管方法も、寿命に大きく影響します。正しい保管方法を知っておきましょう。
シーズンオフの保管方法
最良の保管方法は、適切な幅広ショルダーのウェットスーツハンガーに吊るしておくことです。型崩れを防ぐため、ファスナーは閉じた状態にしておきましょう。
ポイント! 保管場所は、直射日光が当たらず、高温多湿を避けられる、冷暗で乾燥した、風通しの良い場所を選びましょう。夏場の車内や、温度変化の激しいガレージ、物置などは避けてください。クローゼット内などが適していますが、空気の循環があるか確認しましょう。
保管する際の重要なポイントは以下の通りです:
- 絶対にウェットスーツを折りたたんで保管しないでください。折りたたむと、ネオプレン素材に強い圧力がかかり、回復不能な深いシワ(折り目)がついてしまいます。この折り目は、見た目が悪いだけでなく、ネオプレン内部の微細な気泡構造を破壊し、断熱性の低下や、その部分のゴムが脆くなり裂けやすくなる原因となります。
- 他の衣類とは分けて保管する。ウェットスーツの素材(クロロプレンゴム)が、他の衣類と化学反応を起こし、衣類を変色させてしまう可能性があります。
- 完全に乾燥させてから保管する。湿ったまま保管すると、カビや悪臭が発生し、素材の劣化を早める原因となります。
通気性のないビニール製の衣類カバーなどで完全に覆ってしまうと、内部に湿気がこもり、カビの原因になることがあるため注意が必要です。長期間保管する場合は、ホコリ除けと酸化防止のために、ゆったりとしたビニールカバーをかけるという方法もあります。
ウェットスーツのメンテナンスで避けるべきNG行動
間違ったメンテナンスはウェットスーツの寿命を短くします
ウェットスーツの寿命を縮める一般的な間違いを知っておくことも、正しいケアと同じくらい重要です。以下の行為は絶対に避けましょう。
ウェットスーツが長持ちしない原因
注意! 以下のような行為は、ウェットスーツの寿命を大幅に縮める原因となります:
NG行動 | 理由 | 正しい方法 |
---|---|---|
洗濯機・乾燥機の使用 | 縫い目を破壊し、素材を伸ばし、回復不能なダメージを与えます | 必ず手洗いし、自然乾燥させる |
熱いお湯での洗浄 | ネオプレンを劣化させ、接着剤を溶かします | 水またはぬるま湯(体温程度以下)を使う |
直射日光での乾燥・保管 | 紫外線によりゴムが劣化し、硬化、ひび割れ、色褪せを引き起こします | 風通しの良い日陰で乾燥・保管する |
細いハンガーの使用 | 肩部分に過度の負担がかかり、伸びや裂けの原因となります | 肩幅が広く頑丈な専用ハンガーを使用する |
折りたたんでの保管 | 回復不能なシワを作り、素材を弱らせます | 専用ハンガーに吊るして保管する |
濡れたまま・塩が付いたままの放置 | 雑菌の繁殖、悪臭、素材の劣化、硬化を招きます | 使用後すぐに真水で洗い、完全に乾かす |
漂白剤や強力な洗剤の使用 | 生地やネオプレンを損傷させます | 専用シャンプーを使うか、真水のみで洗う |
これらの「やってはいけないこと」の多くは、熱、紫外線、化学物質への暴露、そして物理的なストレス(折りたたみ、乱暴な洗濯、不適切な吊るし方)を避けることに関連しています。これらの要因は、ネオプレンの構造とスーツを構成する接着剤を直接攻撃します。
また、着脱の際も注意が必要です。縫い目や生地を無理に引っ張ったり、爪や指輪で引っ掛けたりしないようにしましょう。手足にビニール袋を被せると滑りが良くなり、着脱しやすくなります。
ウェットスーツの寿命と買い替えのタイミング
ウェットスーツの寿命の目安
どんなに丁寧に扱っていても、ウェットスーツには寿命があります。ウェットスーツの寿命は、使用頻度、使用する海のコンディション(水温、波の強さなど)、そしてメンテナンスの質によって大きく異なります。しかし、一般的な目安としては、およそ2年から4年と言われています。
ポイント! 特に、ウェットスーツのパネルを接着しているボンド(接着剤)の寿命が約3年であるという指摘もあります。使用頻度が高いサーファーの場合、この期間はさらに短くなる可能性があります。
重要なのは、寿命とは単に大きな破れなどの致命的な損傷だけを指すのではないということです。多くの場合、素材自体の劣化による性能(保温性や柔軟性)の徐々な低下として現れます。見た目はまだ使えそうでも、本来の保温性能を発揮できなくなっていることがあるのです。
買い替えを検討すべきサイン
以下のようなサインが見られたら、ウェットスーツの買い替えを検討する時期かもしれません:
- 素材の硬化・柔軟性の低下:ネオプレンが柔軟性を失い、硬くゴワゴワした感触になったり、以前のように伸びなくなったりした場合。着脱が困難になり、着心地も悪化します。
- ひび割れ・亀裂:特に肩、膝、肘など、動きの多い部分や、表面がスキン素材(ゴム)の部分に、目に見えるひび割れや亀裂が生じた場合。これはゴムの劣化が進行している証拠です。
- 浸水の増加:首周り、手首、足首、または縫い目から、以前よりも明らかに冷たい海水が侵入してくる(フラッシング)ようになった場合。これはシールの劣化や、素材の伸び、薄化を示唆しています。
- 縫い目の剥がれ・破損:接着または縫製されている縫い目が剥がれたり、裂けたり、そこから水が漏れるようになった場合。小さな剥がれは修理可能ですが、広範囲にわたる剥がれは接着剤の寿命が尽きている可能性があります。
- 保温性の低下:明らかな浸水がなくても、同じような水温のコンディションで以前より寒さを感じるようになった場合。ネオプレンが薄くなったり(「痩せる」)、断熱性能が低下している可能性があります。
- フィット感の悪化・伸び:スーツが伸びてしまい、体にフィットしなくなったり、特定の箇所がたるんだりして、水が溜まったり浸入しやすくなった場合。
- 取れない臭い・カビ:適切に洗浄しても、強い不快な臭いが残る場合。これは、素材の奥深くにバクテリアが繁殖しているか、素材自体の分解が進んでいる可能性があります。
- 乾燥時間の長期化:以前と比べて、ウェットスーツが乾くのに著しく時間がかかるようになった場合。これは、繊維の損傷や剥離によって、素材が余分な水分を保持してしまっている可能性があります。
注意! これらのサインは、しばしば相互に関連して現れます。一つの問題だけでなく、複数のサインが見られる場合は、スーツ全体の健全性が低下していると考えられます。
初心者でもできる!簡単なウェットスーツの修理方法
小さな破れや裂け目は自分で修理できることもあります
サーフィン中にフィンで切ってしまったり、着脱時に爪で引っ掛けてしまったり、小さな損傷は避けられないこともあります。幸い、軽微なダメージであれば、自分で修理(リペア)することが可能です。
小さな破れの修理方法
自分でできる修理の範囲は、小さな切り傷、裂け目(特にスキン素材の爪による引っ掻き傷)、ピンホール(小さな穴)、縫い目のわずかな剥がれなどです。大きな裂け目、ファスナーの故障、生地の剥離(デラミネーション)、広範囲な縫い目の破損、パネル交換が必要なほどの損傷は、専門のリペアショップに依頼しましょう。
ポイント! DIYリペアに必要な道具と材料:
- ウェットスーツ専用接着剤(ボンド):ネオプレン用に特別に配合された接着剤
- 塗布用具:爪楊枝、細い筆、または専用のヘラなど
- 洗浄用品:修理箇所をきれいにするためのイソプロピルアルコールやウェットスーツクリーナー
- 圧着用具:クリップ、重り、または指で強く押さえるだけでも可
- (オプション)リペアパッチ・テープ:大きめの裂け目や縫い目の補強
小さな破れや接着面の剥がれの修理手順は以下の通りです:
- 洗浄と乾燥:修理したい箇所とその周辺をきれいにし、完全に乾燥させます。汚れや水分、油分が残っていると接着力が低下します。
- 接着剤の塗布:裂け目の断面両方に、または剥がれた接着面の両方に、ウェットスーツボンドを薄く均一に塗布します。爪楊枝などを使うと細かい作業がしやすいです。
- 乾燥(最重要ポイント!):接着剤を塗布した後、すぐに接着せず、接着剤が指で触れても糸を引かない程度に乾くまで待ちます(通常5~10分程度)。接着剤がまだ濡れている状態で圧着すると、十分な強度が得られません。これがDIYリペアで最もよくある失敗です。
- 圧着:接着剤が適切な状態になったら、裂け目や剥がれた面を正確に合わせ、強く圧着します。指で数分間しっかりとつまむか、クリップや重りを使って圧力をかけ続けます。
- 硬化:接着剤が完全に硬化するまで、通常は24時間程度、修理箇所に負荷がかからないように平らな状態で放置します。
- (オプション)補強:裂け目が生地を貫通している場合や、より強度を高めたい場合は、スーツの内側から修理箇所を覆うようにアイロン接着パッチ(メルコテープなど)を貼ります。
専用リペアキットの使い方
市販のウェットスーツリペアキットを使うと、より簡単に修理できる場合があります。キットには通常、専用接着剤とパッチが含まれています。使用方法はキットによって異なりますが、基本的な手順は以下の通りです:
- 修理箇所をきれいにして乾かします。
- キットの説明書に従って、接着剤やパッチを適用します。多くの場合、接着剤を塗ってから少し乾かし、その後パッチを貼り付けます。
- しっかりと圧着し、指定された時間だけ硬化させます。
- 必要に応じて、追加の接着剤やパッチで補強します。
リペアキットを使う際も、製品の説明書をよく読み、指示に従うことが重要です。特に、接着剤の乾燥時間や硬化時間は製品によって異なる場合があります。
まとめ
ウェットスーツは正しくメンテナンスすることで、性能を長く保ち、寿命を延ばすことができます。使用後はすぐに真水ですすぎ、日陰で専用ハンガーを使って干し、完全に乾いてから適切に保管することが大切です。熱や紫外線、折りたたみなどの物理的なストレスを避け、定期的に専用シャンプーで洗浄することで、ウェットスーツをより長く快適に使用できるでしょう。
小さな破れや剥がれは自分で修理できる場合もありますが、大きなダメージは専門家に依頼することをおすすめします。定期的にウェットスーツの状態をチェックし、劣化のサインが見られたら買い替えを検討しましょう。あなたの「セカンドスキン」を大切にケアすることで、より長く、より快適なサーフィンライフを楽しんでください。
監修者

ヒガシーサー
サーフィン歴20年、オンラインサーフィンスクール「Corrective Surf'n' Fitness」のアンバサダーを務め、誰でも簡単にサーフィン上達ができるハウツーを紹介。SNS総フォロワーは65,000人以上。